EA開発を依頼して失敗する人には、共通のパターンがある。技術力の低いところに頼んだからではない。依頼した時点で、EAにできない前提が入っていたケースがほとんどだ。
この記事では、費用の考え方と、失敗する発注に共通する形を整理する。
EA開発の費用は何で決まるか
公開されている価格を見ると、ココナラにはEA10,000円という一律価格を掲げる出品者がいる一方、専門業者は見積もり制で数万円からという案内が多い。
この差は技術力だけの話ではない。何が納品されるかと、どこまで責任を持つかが違う。
費用を押し上げる要素は、だいたい決まっている。
資金管理の複雑さ。固定ロットなら簡単だが、残高比例、リスク率指定、ナンピンやマーチンゲールが入ると、計算とエラー処理が一気に増える。
決済ロジックの数。損切りと利確が固定値なら単純だ。トレーリングストップ、分割決済、建値移動、時間切れ決済が重なると、状態を管理するコードが必要になる。
例外処理。スプレッド拡大時、約定拒否、回線断、口座残高不足。実運用ではここが本体より重い。
バックテストの通しやすさ。ヒストリカルデータでまともに回る形にするには、それ用の書き方が要る。
価格帯そのものの分布と、その差が何から来るかはこちらで分解している。
→ Pine Script作成代行の料金相場|依頼先の選び方と失敗しない発注
つまり「エントリー条件」は費用のごく一部でしかない。EAの大半は、エントリーしたあとの処理だ。
失敗する発注に共通する形
実際にうまくいかない依頼には、はっきりした共通点がある。
裁量の判断が条件に混ざっている。「相場の流れを見て」「明らかに強いときだけ」といった表現は、そのままではコードにならない。何を見て強いと判断しているのかを、数字か位置関係に落とす必要がある。ここを飛ばすと、出来上がったものが自分の裁量と一致しない。
勝率だけで手法を持ってきている。「この手法は勝率90%です」という依頼は多い。だが勝率が高い手法は、損切りが深いか、含み損を抱えて待つ形になっていることが多い。EAにすると、その待ち時間に耐えられない設計になっていたことが表面化する。
決済を決めていない。エントリー条件は詳細に書いてあるのに、決済は「利益が出たら」としか書かれていない依頼は珍しくない。EAは決済を書かないと動かない。
決済とポジションサイズの決め方は、ストラテジー検証の記事で詳しく書いた。
→ Pineスクリプトで勝てるストラテジーを作る方法|検証の実際
バックテストの結果を先に約束させようとする。「勝てるEAを作ってください」という依頼は、開発の請負としては成立しない。作れるのは「指定したルールどおりに動くもの」であって、そのルールが勝つかどうかは別の問題だ。
ソースコードの有無を確認していない。ex4だけを受け取ると、パラメータの微調整すら頼み直しになる。運用しながら改良していく前提なら、ソースは必須だ。
依頼前に自分で決めておくこと
逆に、次が決まっていれば発注はスムーズに進む。
エントリー条件。トレードの言葉でいい。「押し安値を割ったら」で構わない。
エントリーしない条件。指標前後、特定の時間帯、レンジ判定、スプレッドがいくら以上のとき、など。
ロットの決め方。固定なら数値、残高比例なら計算式。
損切り。pips固定か、直近安値か、ATRの何倍か。
利確。同じく方式を決める。分割するかどうかも。
ポジションの上限。同時に何本まで持つか。同方向の追加を許すか。
稼働時間。24時間か、特定セッションのみか。週末の扱いは。
このうち「エントリーしない条件」と「ポジションの上限」は、忘れられやすいわりに実運用での事故に直結する。
検証はどこまで頼めるか
EA開発の依頼で誤解が多いのが、検証の範囲だ。
開発側ができるのは、指定されたルールがコードとして正しく実装されていることの確認と、バックテストが回る状態にすることまでだ。「このEAは勝てますか」という問いには答えられない。
一方で、開発の過程で気づくことはある。「この条件だと年に2回しかエントリーしませんが、それでいいですか」「損切りが浅すぎて、通常のノイズで毎回切られます」といった指摘だ。これは実際にトレードしている開発者のほうが出しやすい。
だから見積もりの段階で、こう聞いておくといい。「実装前に、ロジック上の問題点があれば指摘してもらえますか」。ここに答えられる相手かどうかで、完成後の満足度が変わる。
MT4のEAとTradingViewの違い
最近は、MT4/MT5のEAとTradingViewの両方を検討する人が増えている。両者は性格が違う。
MT4/MT5のEAは、口座に直接注文を出す。VPSに置けば24時間動く。完全な自動売買を作るならこちらだ。
TradingViewのstrategyは、本体は検証と表示の仕組みだ。実際の発注は、アラートをWebhookで外部に飛ばし、そこから証券会社のAPIを叩く構成になる。工程が1つ増えるが、検証はTradingView側のほうが速く回せる。
この構成でどこまで依頼できるかは、こちらにまとめた。
→ 自動売買の作成依頼|TradingViewのWebhook連携でどこまで頼めるか
どちらが良いかは目的による。バックテストを繰り返してロジックを詰めたい段階ならTradingView、詰め終わって24時間回したいならMT4/MT5、という使い分けが現実的だ。
なお、mq4やmq5のソースコードがあれば、TradingViewのPine Scriptへの移植はできる。ex4しかない場合は、先にデコンパイルという工程が必要になる。
MT4側のインジケーター依頼で決めておく項目は、こちらを参照してほしい。
→ MT4インジケーターの作成依頼|発注前に決めておく5項目
よくある質問
Q. 手法を渡すと盗まれないか
契約前にNDAを結べるかを確認するといい。実務としては、ロジックそのものより「そのロジックをどのパラメータで回すか」のほうが再現の壁になることが多い。
Q. 納期はどれくらいか
仕様が固まってから着手するのが普通だ。単機能なら数日、資金管理と例外処理を含む本格的なものはもっとかかる。仕様が固まっていない状態からのスタートなら、その分の日数も見ておく。
Q. 納品後に条件を変えたくなったら
ソースコードを受け取っていれば、誰にでも頼める。受け取っていなければ、同じ相手に頼み直すしかない。ここが納品形式を最初に確認すべき理由だ。
Q. バックテストの結果が良いのに実運用で違う
スプレッド、スリッページ、約定拒否がバックテストでは再現されないためだ。デモ口座での動作確認を工程に入れておくと、この差が事前に見える。
まとめ
EA開発の依頼で失敗するのは、技術力の問題ではなく、依頼の時点でコードにできない前提が入っているケースがほとんどだ。
裁量の判断を言語化する。決済まで決める。エントリーしない条件を書く。ポジションの上限を決める。そして納品形式を確認する。この5つを押さえれば、大きく外すことはない。
PineScript Proでは、実際にトレードしている開発者がコードを書いている。ロジックを聞いた段階で「この条件だと年に数回しか出ません」「損切りが浅すぎます」といった指摘ができるのは、そのためだ。TradingViewのアラートから発注につなげる構成も設計している。ロジックが固まっていない段階からの相談も受けている。
→ 関連記事:自動売買の作成依頼|TradingViewのWebhook連携でどこまで頼めるか
















